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債務、さもなくば悪魔 ヘリコプターマネーは世界を救うか? 単行本 – 2016/12/23

4.7 5つ星のうち4.7 5個の評価

■恒久的なマネタリーファイナンス、いわゆるヘリコプタマネー論議の火付け役となった元英金融サービス機構(FSA)長官が書き下ろした衝撃の書。
解説は早川英男氏(富士通総研経済研究所エグゼクティブ・フェロー、元日本銀行理事)。

以下は、アデア・ターナーが寄せた日本語版への序文「なぜ私は『劇薬』を主張するのか?」から冒頭部分を抜粋した。

「本書の英語版を書き終えた2015年時点で、世界経済が過剰債務に起因する低インフレと低成長の罠にはまっていて、かつタブーとされた大胆な政策を実施しなければ脱却できないことは既にはっきりしていた。
この1年でそうした現実はさらに明白になったが、どこよりも明白なのが日本である。(中略)

本書の中心テーマは2008年の金融危機とそれ以降の長期的な景気低迷だが、この背景には金融システム内の過剰なリスクテイクにくわえ、2008年まで半世紀にわたって続いてきた民間債務の大幅な拡大がある。
先進国における家計と企業を合わせた民間債務残高のGDP比は、1950年の約50%から2007年には170%強に達しており、この間、ほぼ毎年上昇してきた。

だが当時、正統派の経済学はこうした債務比率(レバレッジ)の上昇の危険性をほぼ無視していた。それどころか信用供給を緩和し、レバレッジが上昇することは経済成長にはプラスであり、
中央銀行が低インフレを安定的に達成すれば、マクロ経済の安定は確保されると自信をもって主張していた。日本の経験を見ていれば、こうした想定が危険な間違いであることはわかるはずだった。(中略)

金利がきわめて低い水準に達すると、さらに引き下げても個人消費や設備投資を刺激する効果は低い。そして、この一年の日本やユーロ圏のようにマイナス金利が導入されると、名目需要に対する効果はマイナスになるかもしれない。
だが、超低金利がもたらした結果として何より明白なのは、既存の資産保有者の資産が増加したことである。英国では、2008年以降、1人あたりの所得は2%しか増えていないが、既存資産の残高は30%増加している。

景気の回復力は弱く、その果実は平等に分配されていない。政治的な反発から英国はEU(欧州連合)離脱を決め、米大統領戦で共和党のドナルド・トランプ候補が躍進しているが、それは驚くべきことではない。」
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商品の説明

著者について

1955年生まれ。ケンブリッジ大学卒業。2008年から13年まで英金融サービス機構(FSA)長官。
現在は、ジョージ・ソロスが設立資金を提供し、ケネス・ロゴフ、ジョセフ・スティグリッツ、マイケル・スペンスらが加わったシンクタンク、新経済思考研究所(INET)所長。
ロンドン在住。著書にEconomics after the Crisis. 経済思考研究所(INET)所長。ロンドン在住。著書にEconomics after the Crisis.

登録情報

  • 出版社 ‏ : ‎ 日経BP (2016/12/23)
  • 発売日 ‏ : ‎ 2016/12/23
  • 言語 ‏ : ‎ 日本語
  • 単行本 ‏ : ‎ 472ページ
  • ISBN-10 ‏ : ‎ 4822251888
  • ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4822251888
  • 寸法 ‏ : ‎ 13.5 x 3.6 x 19.5 cm
  • カスタマーレビュー:
    4.7 5つ星のうち4.7 5個の評価

カスタマーレビュー

星5つ中4.7つ
5グローバルレーティング

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上位レビュー、対象国: 日本

  • 2017年1月15日に日本でレビュー済み
    Amazonで購入
    ヘリコプターマネーという刺激的な政策を推奨するからには、それなりの理由がある筈という興味で読んでみた。

    著者は2007年―2008年の金融危機以後、「効率的市場仮説」や「合理的期待仮説」に依拠した現代経済学の主流を信奉する先進国中央銀行が民間銀行の信用創造機能を使ってストックマネーを増やすマネタリーベース拡大政策を主に採用した結果として、金融イノベーション等により、世界的に債務が膨張したと考えている。

    そしてその解決方法として、これまでタブー視されていた、「国債を無利子の中央銀行債務に恒久的に起き換える」いわゆるヘリコプターマネーの採用を提案している。ヘリコプターマネーの用途は減税でも財政でも同じことである。

    著者は日本について、日本は世界で最も公的債務/GDP比が大きく、少子高齢化のため、成長プラス財政再建という通常のプロセスでは公的債務残高を引き下げることはできないと言及している。これは異次元の量的・質的金融緩和、マイナス金利、長短金利操作つき量的・質的金融緩和と変遷した日銀金融政策を含むアベノミクスを暗に否定しているものである。最近では日銀の金融政策の失宜に対する反省もなく、ヘリコプターマネーが議論に上がる傾向も見られる。

    日本に残された政策の選択肢は日銀が保有する国債を「永久無利子の債務」にバランスシート上で書き換える以外に道はないと述べている。これは実質上のヘリコプターマネーである。政府と日銀の統合政府で考えれば、現実の公的債務は小さくなるので、うまく伝えることで、日本の国民、企業、金融市場に与えるショックはさほど大きくないと楽観視している。(効率的市場仮説や合理的期待仮説を否定する著者が、日本に限っては、かくも効率的、合理的期待を持つことが不思議である)

    本末解説で、早川秀雄氏(元日本銀行理事)は
    「ヘリコプターマネーを行っても、中央銀行が独立してその規模を限定できればインフレの昂進に繋がる恐れはないという政治経済学的主張については、専門家の間でも疑問視する見方が多い。国家がデフォルトの危機に直面すれば、中央銀行にはインフレによる救済以外に選択肢はない」と述べている。(全く同感である)

    この本を無批判に読み進めれば、著者のロジックに”目ウロコ”で、きっと取り憑かれる若き経済学徒も多いことでしょう。
    是非、早川秀雄氏の本末解説を読んで”毒消し”することをお奨めします。

    知的興奮は得られたので星は5
    19人のお客様がこれが役に立ったと考えています
    レポート
  • 2017年10月17日に日本でレビュー済み
     ヘリコプターマネーとは日本に当てはめるならば日銀が保有している国債を無利子永久国債に帳簿上書き変えてしまえ、ということらしい。民間金融機関が保有しているならばそんなことはほぼ無理であるから、政府の一機関である日銀が保有しているうちに政府一体となって書き換えろということだ。永久国債とは返さない借金であるという意味であろうから言葉自体が自己矛盾だ。果たしてそれが「国債」と言えるのか疑問である。それは日銀の政府に対する「出資金」に近いものではないか。これは破たんしそうな企業の債務を株式化するデットエクイティスワップの国家版だ。
     この考え方を究極的に推し進めれば、税金や社会保険料の負担がない無税国家ができることになる。アデア・ターナー氏もそこまでは考えているわけではないだろう。氏の考えではヘリマネはインフレーションを起こさない範囲で十分コントロールできるという。AIにより職が奪われ、ベーシックインカム等も導入せざる得ない将来、財源の問題は喫緊の課題だ。 国家に必要な資金をどうやって調達すればよいのか。消費税が本当によい調達手段なのか。国債の発行と管理をどうすれば経済の厚生が上向くのか、著者の問題提起は検討に値する手段と考える。 
    1人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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