ベルリンの壁が崩壊してから25年を迎える今年、私たちは新たな冷戦が芽生えつつあるとの皮肉な現実を前にしてもいる。
かつて地球を東西に二分割する形で対峙してきた超大国の片方が地図上からその名を消し、その呼び水となったのがこの両者の代理人的な形で向き合ってきたドイツだった。そのドイツが第二次大戦後に分割された背景にも、この国が抱えてきた過去が陰を落としていることも明らかである。
本書が日本で刊行されたのはそれを遡ること8年余りの年になるが、その当時のヨーロッパにあったのは和解への道筋を互いに探るとの普遍的かつ共通の課題であった。そしてそれはやがてEU統合との大きな目標へと育ってもきた。
がしかし、ここ陰を落としたのはまたしても「あの問題」だった。それは当時から36年ほど以前に終わったはずの悪夢の再来でもあった。オランダやフランスそして当事者であったはずのドイツ国内ですらも看過できないほどの存在となり、それが壁崩壊後の統合で更に加速された形で現出していることを考える時、もう30年を過ぎようとしているにも関わらず、根底にある問題に目を向けてこなかったのではなかろうかとの疑問が炙り出されてもくる。
本書にある「日本語版への序文」と題する小文の一節に覧られる次の記述を目にした時、分裂と統合の後にあるドイツと彼等が辿ってきた足跡を対岸の火事的なスタンスで他人事とかたづけることができるだろうか。ドイツに向けられた目線が日本と重ならないとは誰が言えるだろうか。
その一言とは「ドイツ連邦共和国(西ドイツ)と日本は、政治的、軍事的強国となるのを断念したのだからこそ、世界的な経済大国になったのだから、これは当たっている。本書の中で連邦共和国に向けてなされた最後の問い、つまり、このような経済力は現実に経済領域のみに制限され得るのか、このために経済力以外のより厄介な義務を引き受けさせられるのではないか、という問いは、しかしまた、日本にも当てはまる」とはいえ、それが軍事大国化せよとのメッセージではないことも確かである。
※なおこの引用中にある「これ」はその前段にある「数年来、再三、フランスで、イギリスで、はもっとしばしば、冗談まじりに、今度戦争になったら、敗戦国の側に回ろう、といわれている。そうすれば、戦勝国と立てられながら疲弊し途方にくれることにはならず、戦勝国中の最強国の援助で再建してもらえて、はるかに豊かで強力になれる」とのジョークを緩用したものである。
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ドイツ総決算―1945年以降のドイツ現代史 単行本 – 1981/9/1
アルフレート・グロセール
(著),
山本尤
(著)
- 言語日本語
- 出版社社会思想社
- 発売日1981/9/1
- ISBN-104390602101
- ISBN-13978-4390602105
登録情報
- 出版社 : 社会思想社 (1981/9/1)
- 発売日 : 1981/9/1
- 言語 : 日本語
- ISBN-10 : 4390602101
- ISBN-13 : 978-4390602105
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