遺言ではなく名言とすらいえないもの(草鹿龍之介や甘粕正彦のそれ)が選ばれていたり、一人一句という縛りは確かにないものの山本五十六だけが2つ選ばれていたりと、著者の選び方には首を傾げざるを得ない。
その点だけが本当に惜しい。故に☆4つと致したい。
悩みながらも、章毎に精選したものを3つ以下へ紹介する。彼らの遺した言葉を噛みしめながら、今を生き抜く糧にしたいと思う。
第1章:現代への教訓(1)~よりよく生きるために
〇神の試練に堪えられぬ人に神風は吹きますまい(向島幸一;第十九振武隊特攻兵)
〇戦いは相手次第。生き様は自分次第(小野田寛郎;第十四方面軍情報部付陸軍少尉)
〇来るべき将来を危惧するよりは、現在を充実せしめて行けばよい(町田道教;第五筑波隊特攻兵)
第2章:現代への教訓(2)~人を活かす術
〇弱者が強者の庇護を当然かの如く考えているのは、結局卑屈であるに過ぎない(大井栄光;支那派遣軍兵士)
〇戦場で最も頼り甲斐のあるパイロットは責任感にあふれ、恥を知る人物だ。操縦が多少うまくとも、成績が人より多少上であろうとも、この性根がなければ何の役にも立たないぞ(西尾常三郎;富嶽隊隊長)
〇本当の勇気というものは、人に親切で、温順であって、一寸見てもわからぬが、いざ自分の務めを果たすべき時には、如何なる障害をも打ち破って進むという、大きな力になって顕れてくるものです(永野修身;元帥海軍大将)
第3章:死とは何か
〇赤穂浪士となって恥を忍び後世に仇を報ずるか、それとも白虎隊となり民族の防波堤として玉砕するか(池田末男;占守島防衛戦で有名な戦車第十一連隊隊長)
〇散るべきときに散ってこそ、男と生まれし甲斐はありけり(豊里陳雄;鉄血勤皇隊所属の沖縄県立第一中学校三年生)
〇散る時には、立派な桜花となって散って行きます。その時は、家の子は、「偉かった」とほめて下さいね(大嶺美枝;白梅学徒隊所属の沖縄県立大第二高等女学校四年生)
第4章:国家とは、平和とは
〇国なくして何の人間ぞ(若麻績隆;第一・八幡護皇隊特攻兵)
〇みんなの身体は、それぞれご両親のいつくしみをうけて育ちあがった貴重なもの、これを大切にとりあつかわぬ国は滅びます(水上源蔵;ビルマ方面軍陸軍中将)
〇我はこのうえもなく平和を愛するなり。平和を愛するが故に戦いの切実を知る也(古川正崇;振天隊特攻兵)
第5章:微笑みの精神 笑顔・諧謔・風刺
〇生きるのは 良いものと気が付く 三日前(及川肇/遠山善雄/福知貴/伊熊二郎;海軍飛行予備学生の合作)
〇待望の出撃命令孝喜は満顔に笑を浮かべて突撃致します。然し此上もなく緊張して(甲斐孝喜;第三建武隊特攻兵)
〇何ものに向っても何ものに対しても何時いかなるときでもニッコリと微笑む人間にならねばならない(中村勇;陸軍航空兵)
第6章:家族や恋人への言葉
〇若き者は常に明朗で何事にも「熱」を以てやれ(佐々木一男;陸軍伍長。弟と妹へ)
〇故郷の父母も、今晩は私のことを思ってこの月を眺めていることだろう、と思えば涙が頬を伝うのを禁ずることができませんでした。ご想像くださいませ(北尾富美子;ハルピン第一病院所属従軍看護婦。父母へ)
〇決して力だけの人になってはいけません。力だけで人生を送るのは不幸の因、滅亡の元です。必ず徳というものを中心として進んで下さい(棚橋順一;支那派遣軍陸軍兵士。愛児へ)
第7章:敗戦後の言葉~戦い未だ終わらず
〇部下の行為については、喜んで責任を分かつ。戦場で死んだ幾千の日本軍将兵の仲間入りをしたい(本間雅晴;第十四軍司令官)(注)
〇私共将校たちの作戦其の当を得ず、かくも悲惨なる敗戦にいたらしめたる罪、一死をもってあるべきのみ(小野寺謙介;陸軍航空士官学校教官)
〇いきにえに尽くる命は惜しかれど 国に捧げて残りし身なれば(松井石根;上海派遣軍司令官)
(注)本間雅晴の優れた伝記に、『いっさい夢にござ候 本間雅晴中将伝』(角田房子)があります。Amazonレビューを投稿しているので、興味がありましたら是非そちらもご覧下さいませ。
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戦場の名言集 - いま胸を打つ遺言 (中公新書ラクレ 530) 新書 – 2015/7/9
早坂 隆
(著)
日本人なら読みたい永遠のメッセージ。 心をふるいたたせる指揮官の言葉。涙をさそう特攻隊員の手紙。同胞愛、郷土愛、家 族愛に満ちあふれた91の言の葉がおりなす、美しい日本人の記録。山本五十六のよう な指揮官から一兵士の言葉まで、ノンフィクションの名手が厳選。極限の状況下で残 された言葉は、生きる礎になる。 やってみせて、言って聞かせて、やらせてみて、 ほめてやらねば人は動かじ (山本五十六) 生きるのは 良いものと気が付く 三日前 (十三期海軍飛行予備学生の合作)
- 本の長さ206ページ
- 言語日本語
- 出版社中央公論新社
- 発売日2015/7/9
- ISBN-104121505301
- ISBN-13978-4121505309
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商品の説明
著者について
1973年、愛知県に生まれる。ノンフィクション作家。『昭和十七年の夏 幻の甲子 園』(文藝春秋)で「第21回ミズノスポーツライター賞最優秀賞」及び「第2回サム ライジャパン野球文学賞ベストナイン賞」を受賞。日本文藝家協会会員。著書に、 『戦時演芸慰問団 「わらわし隊」の記録』『ルーマニア・マンホール生活者の記 録』『世界のイスラムジョーク集』(以上、中公文庫)、『世界の紛争地ジョーク 集』『世界反米ジョーク集』『世界の日本人ジョーク集』『続・世界の日本人ジョー ク集』『日本の戦時下ジョーク集』(以上、中公新書ラクレ)、『祖父の戦争』(幻 冬舎文庫)、『指揮官の決断』『松井石根と南京事件の真実』(文春新書)などがあ る。
登録情報
- 出版社 : 中央公論新社 (2015/7/9)
- 発売日 : 2015/7/9
- 言語 : 日本語
- 新書 : 206ページ
- ISBN-10 : 4121505301
- ISBN-13 : 978-4121505309
- Amazon 売れ筋ランキング: - 869,214位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 730位中公新書ラクレ
- カスタマーレビュー:
著者について
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ノンフィクション作家。最新刊は『戦時下のノーサイド』、『祖父が見た日中戦争』。他の著作に『指揮官の決断 満州とアッツの将軍 樋口季一郎』『昭和史の声』等。『昭和十七年の夏 幻の甲子園』でミズノスポーツライター賞最優秀賞。「世界のジョーク集」シリーズは累計100万部突破。「ニューズウィーク日本版」にて連載中。大磯町立図書館協議会委員長。
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