アメリカの言語学者であるノーム・チョムスキーによる普遍文法理論を基にした言語獲得研究の入門書。本書では、人間には生得的な言語知識が備わっているという仮説を基に、言語獲得の過程でそのような知識がどのように反映されているのかを概説している。
各章は簡単な日英統語論の解説とそれを基にした言語獲得研究の紹介で構成されている。非常にわかりやすく書かれているので専門書特有の難解な印象は特に受けなかった。各章10ページほどの15章からなる200ページぐらいの短い本なので、1ヶ月もあれば通読は容易である。
大学で言語学の入門の講義で生成文法をかじった学生にとっても生成文法を専門的に学ぶ学生にとってもぴったりな一冊であると思う。特に生成文法を学びたての学生は本書を通して理解をより深めることができるはずだ。
本書は内容としてはとてもよく書けているのだが、問題点もいくつか挙げられる。一つ目は練習問題がやや難しく、自習にはあまり役に立たなかったことである。これは練習問題が授業内でのディスカッションやグループワーク用に想定されて作られているからなのかもしれない。二つ目は練習問題で紹介されている参考文献が本書の著者である杉崎氏のものばかりなことである。個人的にもっと様々な研究者による研究を紹介してもらいたかった。しかし、これはUG理論に基づく言語獲得研究がまだ日本ではそこまで盛んでないということの反映だとも考えられる。
言うまでもなく、この一冊で普遍文法理論と言語獲得研究を網羅できるわけではない。しかし、この分野に興味のある読者ははじめの一歩として本書を手に取り、普遍文法理論に基づく言語獲得研究のおもしろさに触れていただきたい。本書を通して諸問題に関して深く考え、可能であれば誰かと話し合うことによって理解を深めていただきたい。
問題点を考慮して、星4つ。日本の第一線でUGに基づく言語獲得の研究を牽引する著者のこれからの活躍にも期待を込めて。
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はじめての言語獲得――普遍文法に基づくアプローチ 単行本(ソフトカバー) – 2015/11/20
杉崎 鉱司
(著)
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幼児はどのようにして母語の知識を獲得するのだろうか。生成文法理論は、生得的な母語獲得の仕組みである普遍文法が存在し、それが獲得過程を制約していると主張する。この仮説から導き出される予測の妥当性を調査した代表的な実証研究を紹介しながら、普遍文法に基づく言語獲得研究の目的と方法を解説する入門書。
- 本の長さ192ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日2015/11/20
- 寸法14.8 x 1.3 x 21 cm
- ISBN-104000058398
- ISBN-13978-4000058391
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商品の説明
著者について
杉崎鉱司(すぎさき こうじ)
三重大学教養教育機構教授.1972年生まれ.2003年コネチカット大学大学院言語学科博士課程修了.Ph.D. in Linguistics(コネチカット大学).三重大学人文学部講師・准教授・教授を経て,2014年より現職.専門は生成文法理論に基づく母語獲得研究.分担執筆した書籍として『言語と哲学・心理学』(朝倉書店),『はじめて学ぶ言語学――ことばの世界をさぐる17章』(ミネルヴァ書房),『認知科学への招待2』(研究社),The Oxford Handbook of Japanese Linguistics (Oxford University Press)などがある.
三重大学教養教育機構教授.1972年生まれ.2003年コネチカット大学大学院言語学科博士課程修了.Ph.D. in Linguistics(コネチカット大学).三重大学人文学部講師・准教授・教授を経て,2014年より現職.専門は生成文法理論に基づく母語獲得研究.分担執筆した書籍として『言語と哲学・心理学』(朝倉書店),『はじめて学ぶ言語学――ことばの世界をさぐる17章』(ミネルヴァ書房),『認知科学への招待2』(研究社),The Oxford Handbook of Japanese Linguistics (Oxford University Press)などがある.
登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2015/11/20)
- 発売日 : 2015/11/20
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 192ページ
- ISBN-10 : 4000058398
- ISBN-13 : 978-4000058391
- 寸法 : 14.8 x 1.3 x 21 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 162,528位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 560位言語学 (本)
- - 2,121位その他の語学・教育関連書籍
- - 3,777位日本語 (本)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2016年4月14日に日本でレビュー済み
チョムスキー理論の枠組みにもとづいてその仮説を実証するために言語獲得の諸現象を具体的に取り扱ったもの。入門書としてはいささか異色ではある。
普遍文法やUG原理といった生成文法理論の基礎となる概念から丁寧に説き起こされ、空主語、関係詞節、前置詞残留などといった興味深い個別的なトピックをとりあげて議論を展開している。非常に気を配られた構成で、概念や用語も一つ一つ解説がなされている。そして最後にはミニマリストプログラムに象徴される生成文法研究の指し示す方向性を示唆している。
生成文法理論自体の評価はさておいても、前提知識がなくとも理解出来る工夫のこらされた、理路整然としてたいへん読みやすい印象である。大学の教科書としての使用が想定されていて、構成は15章からなり、それぞれに練習問題や参考文献がつけられている。言語獲得は別にしても、生成文法自体を理解する参考書としても有益ではないかと思われる。
普遍文法やUG原理といった生成文法理論の基礎となる概念から丁寧に説き起こされ、空主語、関係詞節、前置詞残留などといった興味深い個別的なトピックをとりあげて議論を展開している。非常に気を配られた構成で、概念や用語も一つ一つ解説がなされている。そして最後にはミニマリストプログラムに象徴される生成文法研究の指し示す方向性を示唆している。
生成文法理論自体の評価はさておいても、前提知識がなくとも理解出来る工夫のこらされた、理路整然としてたいへん読みやすい印象である。大学の教科書としての使用が想定されていて、構成は15章からなり、それぞれに練習問題や参考文献がつけられている。言語獲得は別にしても、生成文法自体を理解する参考書としても有益ではないかと思われる。
2016年3月12日に日本でレビュー済み
本書は生成文法に基づく幼児の言語獲得を論じたものであるが、当然ながら生成文法という非科学的言語論を反映し第1部―第1章の基本的仮説から言語本質を理解できない似非科学的論理が展開されている。
最初に「ヒトという(生物)種に生まれさえすれば、必ず母語の知識を身につけることができるという特徴のことを、母語知識の種均一性(species-uniformity)と呼ぶ」と記しながら、次の節ではジーニー(Genie)という仮名の女の子の例で、13歳まで監禁され言語経験を経ないままに成長し、結局その後の教育で母語を獲得できなかった事例を挙げ、母語獲得における言語経験の必要性を裏づける証拠としている。そして、言語経験に加え「幼児のこころにおさめられた内的なメカニズム」が重要な役割を果たしていると論じている。
著者は言語本質を明らかにすることなく単に実体として文が存在するものとして論を進めているため、ここには本質的な誤りがある。実体としての言語を生成することが言語獲得と見做されているため、「母語知識の種均一性」などという言語を知識と見なす現象論的な仮説を提示しているが、この仮説が成立するのであればジーニーも当然「幼児のこころにおさめられた内的なメカニズム」を持ち、その後の言語経験により母語を獲得出来るはずである。しかし、事実がこれを否定しているのは、言語が知識などではなく、また「こころにおさめられた内的なメカニズム」などに依拠する実体ではないことを証している。「母語獲得は刺激の貧困という状況が存在するにもかかわらず可能である」としているが、そうでないのはジーニーの事例で明らかである。
幼児の心は外界に向かい開かれており、能動的な認識と規範能力を習得、発展させることにより言語規範を習得するのであり、ジーニーやアヴェロンの野生児のように生後初期に認識と規範能力を発展させることが出来ないと、生涯言語規範を習得することは不可能となるのである。逆にヘレン・ケラーのように認識と規範能力を習得、発展させていれば後天的に言語を学習、獲得することが可能となる。言語とは言語規範を媒介とした話者の認識の表現であり、対象―認識―表現という過程的構造なしに、それだけで実体として存在するものではない。言語獲得とはこの言語規範の習得であり、アプリオリに言語実体を獲得するのではない。
著者はチョムスキーの普遍文法などというまがい物を真に受け、生成文法は「このような普遍性が存在するのは偶然によるものではなく、そのような普遍性をもたらす母語獲得のための内的メカニズムが遺伝によりヒトに先天的に与えられているからだと考え、普遍性性に対して生物的な意味づけを与えている。」などと言語遺伝子の存在を信じる非科学的トンデモ説であるUG原理を展開している。
第2章では他動詞文の階層性なる概念を提起し、格助詞の脱落および「~のこと」を主語に付けると非文法的になってしまうなどと次の例を挙げている。
a. ハナコがケンを心配している。
b. ハナコがケンのことを心配している。
c.*ハナコのことがケンを心配している。
「どちらの現象も、目的語のみにおいて可能であり、主語においては可能とならない。これらの現象がなぜ目的語のみに起こるのかは重要な問題ではあるが、ここでの議論とはやや独立の問題であると考えられるので、棚上げすることにしよう。」としているが、別に重要な問題でも何でもなく、「ハナコのこと」などという実体でも人でもない「こと」が「心配」などするわけはなく、意味をなさないだけである。しかし、「ハナコのこと」が固有名詞であれば意味を有し非文とはならない。これは、あくまで話者の対象―認識と表現の問題であり形式的に文を実体として扱う誤りを明示している。中国人や韓国人の初学者が、「チョウセン、チョウセン、馬鹿にするな。」「これ、美味い、ある。」などと助詞を省略するのが何故かを明らかにするのは生成文法では出来ない相談である。
これでは、以下の章の展開が単なる現象論にならざるを得ないのは必然であろう。
このような、非科学的、非論理的なトンデモ言語論で若い学生の頭脳を惑わせるのは止めてもらいたいものである。■
最初に「ヒトという(生物)種に生まれさえすれば、必ず母語の知識を身につけることができるという特徴のことを、母語知識の種均一性(species-uniformity)と呼ぶ」と記しながら、次の節ではジーニー(Genie)という仮名の女の子の例で、13歳まで監禁され言語経験を経ないままに成長し、結局その後の教育で母語を獲得できなかった事例を挙げ、母語獲得における言語経験の必要性を裏づける証拠としている。そして、言語経験に加え「幼児のこころにおさめられた内的なメカニズム」が重要な役割を果たしていると論じている。
著者は言語本質を明らかにすることなく単に実体として文が存在するものとして論を進めているため、ここには本質的な誤りがある。実体としての言語を生成することが言語獲得と見做されているため、「母語知識の種均一性」などという言語を知識と見なす現象論的な仮説を提示しているが、この仮説が成立するのであればジーニーも当然「幼児のこころにおさめられた内的なメカニズム」を持ち、その後の言語経験により母語を獲得出来るはずである。しかし、事実がこれを否定しているのは、言語が知識などではなく、また「こころにおさめられた内的なメカニズム」などに依拠する実体ではないことを証している。「母語獲得は刺激の貧困という状況が存在するにもかかわらず可能である」としているが、そうでないのはジーニーの事例で明らかである。
幼児の心は外界に向かい開かれており、能動的な認識と規範能力を習得、発展させることにより言語規範を習得するのであり、ジーニーやアヴェロンの野生児のように生後初期に認識と規範能力を発展させることが出来ないと、生涯言語規範を習得することは不可能となるのである。逆にヘレン・ケラーのように認識と規範能力を習得、発展させていれば後天的に言語を学習、獲得することが可能となる。言語とは言語規範を媒介とした話者の認識の表現であり、対象―認識―表現という過程的構造なしに、それだけで実体として存在するものではない。言語獲得とはこの言語規範の習得であり、アプリオリに言語実体を獲得するのではない。
著者はチョムスキーの普遍文法などというまがい物を真に受け、生成文法は「このような普遍性が存在するのは偶然によるものではなく、そのような普遍性をもたらす母語獲得のための内的メカニズムが遺伝によりヒトに先天的に与えられているからだと考え、普遍性性に対して生物的な意味づけを与えている。」などと言語遺伝子の存在を信じる非科学的トンデモ説であるUG原理を展開している。
第2章では他動詞文の階層性なる概念を提起し、格助詞の脱落および「~のこと」を主語に付けると非文法的になってしまうなどと次の例を挙げている。
a. ハナコがケンを心配している。
b. ハナコがケンのことを心配している。
c.*ハナコのことがケンを心配している。
「どちらの現象も、目的語のみにおいて可能であり、主語においては可能とならない。これらの現象がなぜ目的語のみに起こるのかは重要な問題ではあるが、ここでの議論とはやや独立の問題であると考えられるので、棚上げすることにしよう。」としているが、別に重要な問題でも何でもなく、「ハナコのこと」などという実体でも人でもない「こと」が「心配」などするわけはなく、意味をなさないだけである。しかし、「ハナコのこと」が固有名詞であれば意味を有し非文とはならない。これは、あくまで話者の対象―認識と表現の問題であり形式的に文を実体として扱う誤りを明示している。中国人や韓国人の初学者が、「チョウセン、チョウセン、馬鹿にするな。」「これ、美味い、ある。」などと助詞を省略するのが何故かを明らかにするのは生成文法では出来ない相談である。
これでは、以下の章の展開が単なる現象論にならざるを得ないのは必然であろう。
このような、非科学的、非論理的なトンデモ言語論で若い学生の頭脳を惑わせるのは止めてもらいたいものである。■
2019年4月23日に日本でレビュー済み
本が悪いとかを言うわけではありませんが、はじめて言語獲得について学ぶヒトには難しすぎるとおもいました。