出版社内容情報
近年の日本社会において、マイナス待遇表現(対象を低く悪く扱う表現)はどのように行われ、どんな多様性をもち、どんな変化が起こっているのか。社会に暮らす人々は、対象を「上手く」マイナスに待遇することが求められている。
本書の目的は、現代日本語における、対象への低く・悪い評価を表出する言語表現の表現性と表現行動の多様性を明らかにすることである。対象への低い・悪い評価を表出する言語表現を、南(1987)や星野(1989)の「マイナス敬語」という用語を踏まえ、ここでは「マイナス(の)待遇表現」と呼ぶ。逆に対象への気遣い、高い・良い評価を表出する敬語や、相手に対する配慮を示す表現を「プラス(の)待遇表現」と呼ぶ。
第 I 部 理論的背景
第1章 研究の対象と考察の方針
第2章 待遇表現の言語行動論的研究史
第3章 マイナスの待遇表現行動と言語行動研究
第4章 マイナス待遇表現行動のモデル
第 II 部 マイナス待遇表現の表現性と多様性
第5章 関西方言の卑語形式「ヨル」の表現性
第6章 卑語形式選択における規範意識の属性差―卑語形式が選択されるプロセスの多様性―
第7章 マイナス待遇の契機への評価とその表出の世代差
第8章 発話レベルのマイナス待遇表現行動の分析(1)―相手との対人関係による変化―
第9章 発話レベルのマイナス待遇表現行動の分析(2)―補償的表現スタイル―
第10章 大学生におけるマイナス待遇表現行動の地域差―待遇表現行動の地域的変異―
第11章 マイナス待遇表現行動の契機に対する言語行動の変容
―愛知県岡崎市の『敬語と敬語意識』に関する経年調査から―
【著者紹介】
西尾 純二(にしお じゅんじ)
兵庫県生まれ。三重大学人文学部卒業,大阪大学博士前期課程日本学専攻修了,同後期課程中退。博士(文学)。大阪大学助手などを経て、現在大阪府立大学准教授。社会言語科学会理事。単著に、『関西・大阪・堺の地域言語生活』(大阪公立大学共同出版会,2009)。共著に、『ことばのコミュニケーション』 (ナカニシヤ出版 2007)、『日本のフィールド言語学』(桂書房 2006)、『社会言語学の展望』(くろしお出版 2006)、『ケーススタディ 日本語のバラエティ』(おうふう 2005)、 『応用社会言語学を学ぶ人のために』共著 (世界思想社 2001)など。
内容説明
マイナスの待遇表現行動は、良好な対人関係を維持するための規制を受けるが、話し手はマイナス評価を表明したいという欲求を持つ。この規制と表現欲求との間には、どのような力学が働くのか。敬語の研究書とともに揃えたい1冊。
目次
第1部 理論的背景(研究の対象と考察の方針;待遇表現の言語行動論的研究史;マイナスの待遇表現行動と言語行動研究;マイナス待遇表現行動のモデル)
第2部 マイナス待遇表現行動の多様性(関西方言の卑語形式「ヨル」の表現性;卑語形式選択における規範意識の属性差―卑語形式が選択されるプロセスの多様性;マイナス待遇の契機への評価とその表出の世代差;発話レベルのマイナス待遇表現行動の分析(相手との対人関係による変化;補償的表現スタイル)
大学生におけるマイナス待遇表現行動の地域差―待遇表現行動の地域的変異
マイナス待遇表現行動の契機に対する言語行動の変容―愛知県岡崎市の『敬語と敬語意識』に関する経年調査から)
第3部 まとめ
著者等紹介
西尾純二[ニシオジュンジ]
兵庫県生まれ。大阪大学大学院博士前期課程日本学専攻修了。同後期課程中退。博士(文学)。大阪大学助手などを経て、大阪府立大学准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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