内容説明
さまざまな身分の人が集まる近世都市。貨幣経済のなか、人々は身分をどう捉え、行動したのか。商家や武家の奉公人、町奉行所の役人、代官所の御用請負人、そして、長吏たち…人・モノ・情報と身分の関係を描く。
目次
都市に生きる人びとを描く―プロローグ
近世の都市社会と貨幣
商家奉公人の「立身」と「出世」
商家の葬礼と人間関係―大坂雑喉場の魚問屋・神崎屋平九郎家の人脈形成
近世前期の京都における武士―「奉公人」と「武家奉公人」をめぐって
掛屋と代官所役人
「長吏の組織」と大坂町奉行
幕末維新期の都市社会―都市行政の変容と町奉行所与力
都市の身分願望―エピローグ
著者等紹介
宇佐美英機[ウサミヒデキ]
1951年福井県生まれ。1978年同志社大学大学院文学研究科博士前期課程修了。現在、滋賀大学経済学部教授
薮田貫[ヤブタユタカ]
1948年大阪府生まれ。1974年大阪大学大学院文学研究科博士課程中退。現在、関西大学文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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奇天
2
京・大坂を中心に都市における身分のあり様、意識を7本の論文で描いている。細部を詳細に書いている分、一冊全体としてのまとまりにはやや欠ける印象。武家や商家における家の存続と世襲の問題についてもう少し踏み込んだものを読んでみたかった。「商家の葬礼と人間関係」「掛屋と代官所役人」は読み応えあり。2011/01/19
wang
1
江戸時代の町人の身分意識に関連するバラバラの論文7本。マイナーなテーマが取り上げられていて、当時の民衆がどんなことを考えどんな生活をしていたのかの実態に近づける気がする。儀礼で用いられる貨幣、商家奉公人の出世意識、ある商家の歴代当主の葬列参加者を分類して、社会的関係を分析、武家奉公人とは誰なのかを江戸期を通じての変化、幕末期の京都での金穀拠出など。大阪の長吏組織が町奉行所配下で治安活動に取り組んだことや、地方の代官所のために働いた掛屋の活動についてのまとめなどは初めて知ったことで非常に面白い。2019/07/27