内容説明
古くから詠い、唄われつづけ、明治になって新しい旋律が付け加えられた「君が代」を、日本文化の伝統のなかに位置づけつつ、社会や政治との関わりとともに考察する。「君が代」を不幸な固定観念から解放し、新しい視点のもとに見直す画期的な試み。
目次
序章 好奇心への導火線
第1章 みっつの切り口
第2章 手掛かりとしての伝統文化
第3章 草の根への浸透
第4章 維新のまえ・あと
第5章 国際社会の渦へ
終章 その後の『君が代』
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HMax
18
君が代を学校で教えられなかった世代の私には、驚きの事実の連続でした。1100年以上の昔からずっと人々に愛され続け結婚式や長寿等の祝い事に歌われていた。付箋だらけになる素晴らしい本でした。1000年以上、恋人や肉親への思いの歌とされていたのが、明治に入り欧米列強から半文明国(中国・トルコ・タイ・日本、それ以外は植民地・未開国)とされ、何とか欧州に追い付き、追い越したい思いを持って昭和に入るとともに君が代が総力戦の装置として駆り出された。古代の無名な歌詠みと明治の音楽家が作った雅楽様式の国歌が本当の姿でした。2019/06/29
オサム兄ぃ
6
《君が代》が多面的に語られていて、読書中何度も「目からうろこ」の驚きだった。世界近代史中の「国歌」の位置と、歌詞の来歴と文化史的評価、そして西洋音楽と雅楽の出会いが生んだメロディー。この歌が世界的にユニークで、日本人の伝統的感情と文化に根差しているのがよく分かる。それだけに侵略戦争推進の道具とされた戦前の悲劇が強く感じられ、偏りのない歴史認識と被害者の心に届く謝罪により、本来の平和を寿ぐ歌として解放されることを切に願う。右左を問わずお薦め。安倍首相の「国立大学と国旗・国歌論」がどんだけおバカか分かるよ。2015/04/20
zatugei
0
「君が代」が、古代から近代に至るまで、和歌や歌、文芸、芸能などにどのように現れるかを説いた本。内容は面白いが、文章はとても読みにくい。2017/05/23
横丁の隠居
0
現行の「君が代」の詳細な成立経緯を追うのではなく、この「国歌」の擁する広大な歴史的背景を描いている。特に上代からはじめは「我が君は」と歌い始められたものが徐々に変化して、多くの作品に広がっていく描写が興味深い。「君が代」はこの長い歴史を持つ日本の「うた」と西洋音楽のハイブリッドだといってよいだろう。一方で、アジア的な背景としてはそれほどの厚みを持つものではないということも明らかになる。2022/08/20