出版社内容情報
三木那由他[ミキ ナユタ]
著・文・その他
内容説明
『ONE PIECE』『鋼の錬金術師』…あの登場人物たちが会話を通じて企んでいること―。私たちは会話を通じて何を伝え、何を企んでいるのか。あるいは相手の心理や行動にどんな影響を及ぼそうとしているのか。漫画や小説など、27のフィクション作品を題材に、「会話」という営みを徹底分析!
目次
第1章 コミュニケーションとマニピュレーション
第2章 わかり切ったことをそれでも言う
第3章 間違っているとわかっていても
第4章 伝わらないからこそ言えること
第5章 すれ違うコミュニケーション
第6章 本心を潜ませる
第7章 操るための言葉
著者等紹介
三木那由他[ミキナユタ]
1985年、神奈川県生まれ。大阪大学大学院人文学研究科講師。京都大学大学院文学研究科博士課程指導認定退学。博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
125
言葉に出すと、語り手と聞き手の間に共通の約束事が出来てしまい、それに縛られてしまう。そして疑問文や比喩、言い換えによって聞き手の意識を変えることで、相手の心理に揺さぶりをかけることも出来るようになる。会話はコミュニケーション=話者間での約束事を構築すること、マニピュレーション=相手の心理や行動を操ろうとすることに大別できる。シェイクスピアをはじめとする古典における会話から、現代のボーイズラブ漫画まで豊富な実例を引き、会話のパターンを類型化している。言葉によって縛られないことを望むには、沈黙しかないのか。2023/01/16
徒花
121
おもしろかった。会話を「コミュニケーション」と「マニピュレーション」の2つの側面に分け、どちらかというと「コミュニケーション」部分の役割のほうにフォーカスして、わたしたちが普段の会話の中で一体なにを行っているのかを分析する一冊。単なる情報伝達ではなく、「約束ごとの形成」がいかにして行われるのかなどを、主にフィクション作品の会話を例に出しながら解説してくれてとてもわかりやすい。2022/09/28
mukimi
107
トランスジェンダーであることを公表している筆者は本音の伝え方や社会との付き合い方で葛藤した実体験があるのではないだろうか。会話の成り立ちを新鮮な切り口で解剖する。会話をコミュニケーション(主音声)とマニピュレーション(副音声)にわけ、前者は約束事の形成、後者はコミュニケーションを通じ相手に影響を与えようとすることと定義し様々な作品の会話の具体例を挙げてコミュニケーションとマニピュレーションの方向性の違いから会話を分類/分析する方法を提示する。正解はなくとも会話の成り立ちを認識することは今後試してみたい。2023/12/22
けんとまん1007
107
会話と対話。そもそも、話すとは、どういうことなんだろうと再考しながら頁を繰った。自分の中でボンヤリとしてあったものが、言語化された思いがある。そもそも、言葉とはから始まり、声に出すことの意味、聞くことの意味、そして理解することや、何を意図するのかをも考える。単なる情報の一部として、浪費されている言葉を、改めて大切にしようと思う。それは、声だけでなく文章であったり、表情・声色や間なども含めて考えていきたい。まさに、生きるための哲学。2022/12/23
ひろし
90
コミニュケーションとは、意味のある内容をやり取りすることだと誰もが思っていると思うが、そればかりではないようだ。会話をすることでその内容が両者の約束事になるという。確かにあのときこういう話をしたよねってことは日常でもある。設定が特別なフィクションでは有効な場面になりうるだろう。会話は、高等手段としては言っていないことを推測させて伝えることすらできることが漫画の例で示されている。確かに用例を見たことがある。我々は知らず知らず、そうした会話で相手方の言動を変えようとしている(マニピュレーション)ことが分かる。2022/12/17