内容説明
天才芸能民の戯曲をその生涯と重ねつつ斬新に読み解く。
目次
世阿弥の時代
能以前の劇台本
父の能とその改作
歌謡・劇・舞踊の合体―『松風』
女を責める能―『泰山府君』『恋重荷』
美少年哀惜の能―『敦盛』
兄弟愛憧憬の能―『春栄』
青春追憶の能―『実方』『檜垣』『関寺小町』
アンドロギュヌスの能―『井筒』
女性差別に抗う能―『多度津左衛門』〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のほほんなかえるさん
1
もっと近い芸能としての「能」の姿を垣間見る。今の私たちが観ると遠く感じる言葉を、もう少し身近なものにすることができれば、気軽に楽しめる芸能の一つとしての魅力が見えてこないものだろうか。2011/12/27
ブルーローズ
1
ちょっと斜に構えた視点で、世阿弥について書いています。これだけを鵜呑みにするのはどうか、と思いますが、能をあまり高尚だ、敷居が高いと思わずにいさせてくれます。どんな芸術も観客あってのことですから。2009/07/28
mustache
0
世阿弥の生涯を検討した結果、芸能界の主流を外され、世に忘れられた老優という失意の我執者の立場を発見する筆者による、世阿弥の世界の徹底した脱構築。演能時間がかつての約3倍に延びていることが、能が現代の観客から見放されつつある一つの原因だが、それも世阿弥の聖化と密接な関連があるとすれば、どうやって能にもとのテンポと観客への反応を取り戻すことができるのか。誠に悩ましい問題だ。2018/06/20