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図書館長  竹内 真彦ヒトは迷う生き物です。ましてや、コロナ禍という厄災の中、迷いの種は尽きません。それでも、道を見つけ、前に進まねばなりません。世の中がどんなに変容しようとも、自分がそこに生きているということだけは、おそらく「事実」として動かしがたいことだからです。迷いの中から自分の力のみで脱することは、時として非常に難しいことです。そんな時は他者の力にすがってもよい。むしろ、他者の声にこそ耳を傾けるべきなのかも知れません。世の中には、様々な声が反響しています。肉声のみならず、SNSを始めとするネット上の、あるいはテレビや新聞などのマスメディアにあふれる声(情報)、全体としては無秩序にしか見えず、そんなものに耳を傾けても、自分の進むべき道を示してくれる「道標」にはならないのではないか、という失望を感じることもあります。そんな中、「本」というのは少し特殊なメディアです。SNSやマスメディアにあふれる声はしばしば一過性であって時間とともに消失してゆきます。しかし、本はかなりの長期間にわたってそのままの姿で存在しています。いわば(比較的)不変の声だと言えるでしょう。これであれば「道標」になるかも知れません。ただし、何を読んだらいいのか? というのは本をめぐる永遠の悩みです。「手当たり次第に読めばいい」というのは一つの正解ではありますが、残念ながら個体としてのヒトの時間は有限です。やはり、ここでも道標が欲しい。そして、道標になりそうなものがあります。2021年度で10回めを迎えた「私のお薦め本コンテスト」では、多くの龍谷大学生が自分の「お薦め」を紹介してくれました。『星の王子さま』のような古典的名作から最新の芥川賞受賞作、硬派な評論書まで「お薦め」の本は多岐に渡ります。応募者は30名、「お薦め」された本は計48部となります(参加してくださった皆さん、本当にありがとうございます)。その全てをご紹介することはできませんが、優秀作品が図書館HPに掲載されます。「お薦め」してくださった学生の皆さんより遙かに年長の私が読んでも道標となるような文章でした。是非ご一読を。また、本から道標を得た、と思った方は、来年度是非この「私のお薦め本コンテスト」にご参加ください。たくさんの皆さんのご参加をお待ちしています。90館長講評道標を探して

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