瀧本哲史 著、講談社、2011.87小寺 哲平(農学部 資源生物科学科 2年)書店に行けば「思考法」「自己啓発」の本がならび、動画サイトでは「ビジネス系」と言われる、視聴者に「学び」を提供するコンテンツが再生数を伸ばしています。これら昨今の「勉強ブーム」は一体なんなのか。その正体とは、「勉強すれば幸せになれるよ」という考え方を流布し、人々の不安をあおって裏で儲けようとしている人間がいる「ビジネス」だ。こんな驚きの主張を、著者は冒頭でします。本書は、これから激動の「本物の資本主義社会」を生きていく学生や若者に、この社会を生き抜くための「武器」を与える、という本です。本書を読み終えたとき、いかに自分が「社会」というものを何も知らないで生きていこうとしていたのかを痛感させられました。では、いったいどんな著者なのか。著者は「投資家」です。東大法学部を卒業し、米大手コンサルティング会社のマッキンゼーを経て、京都大学の客員教授を務めていました。その経歴だけで身構えてしまいそうになるほどのスーパーエリートです。そんな著者の視点から語られる「資本主義」の話。むずかしいことが書いてあるように思えるのは仕方がありません。しかし、ここでいったん振り返ってみてほしいことがあります。「資本主義」「投資」。この2つの言葉を聞いてどう感じますか。もしあなたが「悪」や「危険」といった負のイメージを思い浮かべたなら、本書を手にする価値があります。なぜなら、そのイメージこそが資本主義についてまったく勘違いしていることの証拠だからです。資本主義は「ただのシステム」であり、投資は「投機」と区別しなければならない。著者はくり返しこの2つについて述べ、「これらの本質について理解している人は、ほとんどいない」とも語っています。そして、本書は若者へのメッセージ本でもあります。ですから、決してむずかしいことは書いてありません。特に冒頭で挙げたような、世の中の動きに対する著者の考え方が非常におもしろく、著者にしか語れない「経験」や「エピソード」があるからこそ、この何やら物騒なタイトルからは想像もできないほど中身のつまった内容になっています。「自分の将来が不安だ。」そんな悩みを持つのは今の日本社会では当然です。この社会を生き残るために、まずは著者から「武器」を受け取りましょう。優秀賞『僕は君たちに武器を配りたい』
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