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望月衛 訳、東洋経済新報社、2007.71檜浦 大河(経済学部 1年)経済学と聞くと皆さんは何を感じますか。私はこの本を読むまで、難しそう、お金のことばかりでよく分からない、実用的でない、という印象でした。そう、この本を読むまでは。筆者のスティーヴン・レヴィットは経済学の分析方法を使って誰も気づかない本質を見抜くまさに名探偵のような存在です。学校の先生と相撲の力士、どこがおんなじ?完璧な子育てとは?など誰もが気になる話題を、経済学にしかできない視点から面白おかしく描く、これが本書の概要といったところでしょう。この本の特長はいくつもありますが、その中でもまずアピールしたいのが、その読みやすさ、楽しさです。なかなか経済学といわれるだけで手を出しにくくなるなんてこともあるかもしれませんが、その方にこそより楽しんでいただけるかもしれません。レヴィットは自身は数学が苦手だと言います。私たちの感覚に近いような彼の分析は、普通の人は考えもしないところから始まりますが、そのシンプルでわかりやすく、度肝を抜かれる結論はすべての人を魅了するでしょう。こんな話がありました。日本は投票率の向上のため、インターネットを使った投票にすべきという声がしばし聞かれます。果たして本当に投票率は上がるのでしょうか。実際にスイスで選挙の投票を楽にして、投票率を上げるため、郵送で投票する方法をとったところ、なんと投票率が下がったといいます。レヴィットはこれに対し、人は何で投票に行くのか考えれば良いといいます。彼はこのことに、責任感や役目を果たしたぞという正義感があると結論づけました。なぜか投票率は田舎で特に下がっていたからです。横のつながりの強い田舎では人に投票したことを見られることが重要であり、それがなくなったことでかえって投票しなくなったことからの分析でした。まさに、シンプルで明確、かつ通念をくつがえすおもしろい発見です。彼の熱意と好奇心に触れれば、経済学にわくわくせずにはいられなくなるでしょう。経済学部生に向けてこの文章を書いたと思われているでしょうか。もちろん彼らにとっては経済学者がどんな考え方をしているのかもわかり、勉強にもなるでしょう。でもシンプルに、気になりませんか皆さん。銃とプール、どっちが危険?赤ん坊につける名前はどのくらい大事?もうあなたはレヴィットの虜です。アメリカ中を炎上させ、多くの賞賛、そして批判を浴びながらもジョン・ベイツ・クラーク賞というアメリカ経済学者にとってノーベル賞よりとるのが難しいとも言われる賞を受賞した彼の、世界で400万部も売れたこの本の中でまた、お会いしましょう。優秀賞『ヤバい経済学:悪ガキ教授が世の裏側を探検する』スティーヴン・D・レヴィット、スティーヴン・J・ダブナー 著;

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