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58図書館長  新田 光子2017年度「私のお薦め本コンテスト」には、3キャンパスから22作品の応募がありました。応募していただきました皆さん、ありがとうございました。厳選なる審査により、大賞ならびに優秀賞3編を決定しましたことは、すでに図書館ホームページでお知らせしました。今回は、受賞作の全文をこのホームページ上に掲載し、あらためて、今年度のコンテスト審査報告をさせていただきます。応募作品は、名作として定評のある本(G.オーエル著『1984』など)、あるいは最近の話題作(『〆切本』左右社、2016年発行、本学2016年度学生選書など)と、さまざまでした。いずれも自分が読んでみて大変おもしろかった、とても役にたった、あるいは、今まで気づかなかったことに気づかされる本だったなど、なぜ「お薦め本」にとりあげたか理由がはっきり伝わる力作ぞろいでした。なかでも、他の人にもぜひ読んでもらいたいという推薦の気持ち、熱意が審査員によく伝わってきた作品、高得点上位4編を受賞対象とさせていただきました。わずかな得点差で、受賞に「もう一歩」という佳作が少なくありませんでした。山本七平著『「空気」の研究』を取り上げた応募者は、この本が実生活の中で物事を判断していく知恵をいろいろ提示している本だと高く評価して推薦してくれました。同感です。塩野七生著『ローマ人の物語』は壮大なスケールの歴史書であり、応募者曰く、大学生が学生時代に読んでくれて、イタリアにぜひ旅行してほしいとの理由には、十分説得力があると思いました。本は、著者の関心、考え方、読者に何が伝えたいかを明らかにして、読者と著者とでさまざまな出会いがあります。そして、著者が古今東西の実在の人、あるいは架空の人を紹介し、登場人物としていますから読者は主人公ほかいろいろな人との出会いがあります。本をとおして著者をはじめとした人との出会いがあり、その人の生き方、あるいは考え方に深い共感、感動を味わうことができますから、ひとりで本を読んでいてもいろいろな人との出会いがあります。さらに、今回のような「お薦め本」として本を話題にとりあげてくれるなら、他者との共通の世界を広く開くことができます。受賞者の一人、馬場友理さん(社会学部3回生)の次の言葉がとても印象的でしたので、紹介させていただきます。「『勉強のため』『情報を得るため』『レポートを書くため』—本を読むことが手段となり、他のことのために本を読む—子供のころはそうでもなかったはずなのに、大人になるにつれて本を読むことを目的とせず手段としているという人は多いのではないだろうか。そして、本を手段とすることで、本を読むことに楽しみを見出せなくなったという人もまた、増えているのではないだろうか?かくいう私もその一人だ。本を読むことに疲れ、文字を見ることに疲れ、本を読むことが嫌にさえなった。本書は、本を読むことが好きな人だけでなく、本を読むことに苦手意識を持つ人にとっても、どのような人にでもお薦めできる本である」。馬場さんのお薦め本は、『世界の美しい透明な生き物』(武田正倫、西田賢司監修、エクスナレッジ、2013年発行、2013年度学生選書)です。楽しみのために本を読む、授業の発表準備のため、レポートを書くため、論文を書くために必要な本を館長講評本との出会い、人との出会い

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