又吉直樹 著、文藝春秋、2015.54稲田 啓祐(社会学部 社会学科 4年)「はいどうもー!スパークスですよろしくお願いします」「突然ですが、僕らスパークスのこと知ってるよ!って方おられます?」「あっ!結構いてくれてる!嬉しいですね」「ピースの又吉さんが火花で俺らのこと書いてくれたからな」「あれ芥川賞獲ってエラい評判になったもんな」「せやけど、本間に芸人が書いた本なんかおもろいんか?」「失礼なこと言うな!あの本メチャクチャ売れてるねんぞ!」「売れてるからいうておもろいとは限らんやないか」「それはそうや。ほな今日はお前に火花のおもろいとこ教えたるわ」「おう教えてぇな」「なんやゆうて一番の魅力は、小説から漂う雰囲気や」「雰囲気?どんな?」「暗い部屋閉め切って何か燻してるような雰囲気や」「よう分からんぞ?」「言い換えるなら、わしら売れてない芸人の日常そのものや」「ほう」「金はあれへん。売れるか分からへん。営業で漫才しに行っても誰も聞いてへん」「お先真っ暗やないか」「せや。せやけどそんな真っ暗な中でも、漫才やりたい!人を笑わせたい!いう情熱だけは燃えてるんや」「そんなもんみんな興味ないやろ?」「そんなことない」「何でや?」「売れてへんでも、俺はこの道で生きて行く!って決めて、究めようとしてる人間はカッコええやろ?」「まあなあ」「普段は暗闇の中で燻り続けとる。人に評価されることなんて滅多にない。せやけど、そういう状況で、歯ぁ食いしばって這い上がろうとする人間はエネルギーに満ちててカッコええ」「せやなあ」「火花読んでたら、そういう燻ってる人間のドロドロしたエネルギーみたいなんがビンビン伝わってくる。せやからおもろいんや」「なるほど」「大学生の今のうちに読むべきや」「大学生関係あるんかいな?」「火花いうタイトルやけどな、何回も言うように、書かれてるの燻りやねん。火ぃ点く前の」「ほう」「大学生は社会に出て行く前で、これからどうしよかな?て迷ってる人多いやろ?」「確かに、色々考える時期やな」「なんや色々燻ってる状況やろ?」「まあな」「火花の登場人物も、自分のやってる笑いがこれでええんかな?どうなんかな?言うて悩みまくるんや」「笑いは難しいからなぁ」「おんなじような境遇にある人はきっと触発されるもんがあるんちゃうかと思うねん」「それは良いわ」「せやろ。あと、別にリア充とちごてええねんなぁと思えるで」「どういう意味?」「せやから、悩んでてもいいねんなぁて、無理に明るくせんでええねんなぁて思えるねん。本間に、今のうちに読んどいて損はないで!」「エラい推すなぁ」「せや。これはそういうやつなんや」「そうなん?それは良いとして、俺ら始まりから一つもおもろいこと言うてないけど大丈夫?」「本間やな。だから俺ら売れへんのかな」「絶対それやん!もうええわ!」優秀賞『火花』
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