そんな新たな出会いが多くありますように。3図書館長 竹内 真彦2012年に始まった龍谷大学図書館主催の「私のお薦め本コンテスト—My Favorite Book—」が2021年度で第10回を迎えました。これを記念して、これまでの受賞作品を一挙に読めるような形にまとめたものが本書です。龍谷大学に在籍した/している学生たちの「読書史」のエッセンスと言い換えることもできそうです。受賞作品の分野は多岐に渡ります。私自身、「ああ、これは読んだなぁ」と思う本もそれなりに含まれています。一方で、タイトルだけ知っている本、あるいは全く未知の本も少なくありません。人間は数多くの本を書いてきました。しかし、著者だけでは本は存在しません。読者がいて、初めて本は存在するのです。誰にも読まれない本は存在しないも同然です(もっとも、著者は必ず読んでいるでしょうから、読者のいない本は原理的に存在しないのですが)。「ベストセラー」という言葉があるように、多くの読者を獲得した本は社会的に高い価値を持っているように思われがちです。しかし、その一方で多くのベストセラーは一時の流行として消費されてしまい、10年後には誰も覚えていない……という「悲劇」もしばしば起こっています(読者を失った本は存在しないのと同じわけですから、これは本にとっての「悲劇」でしょう)。つまり、本が「存在し続ける」ために最も大事なことは、可能な限り長く読者を獲得し続けることなのかも知れません。その際、重要なのは「熱心な読者」です。その本のファンとなり、「アツい言葉」で他の人にその本を紹介する。それによって、その本は新たな読者を獲得し、存在し続けることができる……というわけです。この作品集には、そんな「アツい言葉」が詰まっています。多くの人がこれを読まれることによって、本との新たな出会いが生まれたならば、それは文章の執筆者のみならず、本にとっても、そして新たな読者(この文章を読んでくださっているあなた自身)にとっても幸福なことだと思います。本が存在し続けるということ
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