山本 滉大(農学部 食料農業システム学科 1年)私がお薦めする本は『日本農業は世界に勝てる』という本である。特にこの中で興味をもったのは、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)と日本の農業の結びつきについてである。日本の農業の評価は規模が小さい、高齢化、農業就業者の人口減少などといったネガティブなものが多く、今世間を騒がしているTPP交渉によって衰退の道を辿るであろうと危険視されている。また、このTPP交渉で注目されていることは、農作物の関税撤廃である。関税がなくなることによって、安い外国産の作物が日本に流入し、日本の作物が売れなくなると言われている。実際に日本の農業に対して、農林水産省、農協、農林族議員、農学者で構成される農政共同体の識者たちは、日本の農業は、大規模農業を行うアメリカのような国々には敵わない、日本の農業は国際競争力がないと述べる。しかしこの書物では、このような意見とは全く違った見解が記されている。それは、TPPと日本の農業の結びつきが利点となるという指摘である。具体的に言えば、農協の独占的な価格調整や農協の意に反した農家へのいじめなどこれまでの「しがらみ」を解体することになると、この筆者は述べる。現在の農協は金融業が中心となっている。このTPPとの結びつきを機会として農協から農業部門を切り離し、就業農家たちによる自由な販売形式と価格設定を導入し、農業部門での貿易の輸出入の拡大を目指すことで日本の農業がより発展できるはずであると述べている。上記の点より、私はこの書物を多くの人々に読んでもらいたいと考えている。それは、マスコミの取り上げるTPP交渉は負の側面が強く強調されていると感じたからである。マスコミやニュースの内容だけを鵜呑みにしてしまっては、ただ「日本の農業は弱い」だけで終わってしまう。よって、それとは違った「日本の農業の強み」という正の側面をもつ意見も取り入れて吟味していく必要があろう。また、そのような議論によって、初めて日本の農業の現状を理解しTPPが国内農業にどのように影響を与えていくのか考えていく事ができるようになると思う。この本が広く世間に知られるようになり、人々が日本の農業の現状をより深く理解する一助となることを期待し、この本を推薦した。しかし、この本だけを読みその内容だけに感化されて一方向の考え方で凝り固まって欲しくはないとも考えている。私たち、大学生はあらゆる知識を持って自分で物事について考えていかなくてはならないとも考えているからである。46優秀賞『日本農業は世界に勝てる』山下一仁 著、日本経済新聞出版社、2015.
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