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42竹鼻 智也(法学部 法律学科 2年)「チェルノブイリのリンゴは大きくておいしそうだけれど、食べても平気ですか?」「いいですよ、でも、食べ残しは深く土に埋めてください」というジョークが存在しているそうだ。1986年4月26日、旧ソ連ウクライナ共和国のチェルノブイリ原子力発電所が爆発炎上した。それと同時に大量の放射線物質が大気中に放出された。放射線物質は地中深くに根ざし植物に吸収されている。その地のリンゴは「禁断のリンゴ」、「毒リンゴ」という不名誉なレッテルを張られてしまっている。当時のソ連政府は半径30キロ圏内の住民13万人全員を避難させた。そして29年たった現在でも立ち入り禁止になっている場所が存在している。本書は2008年に出版された写真集だが、ゴーストタウンとなったチェルノブイリの光景は見る人に紛れもないリアルを突きつけ、建物の歴史や空気、においまで伝わってきそうなほど不思議な力に引き込まれるだろう。人類が長い年月生活していない場所であっても、自然は再生し始めている。誰かが住んでいそうな住宅街は木々に覆い包まれ、見たこともない混沌とした光景となっている。チェルノブイリ原子力発電所の近くに城下町的な地域が存在していた。その地域には、学校や病院、音楽ホール、遊園地などがあり、ソ連人民の憧れの町であったそうだ。しかしその憧れの町は一瞬にしてゴーストタウンに姿を変える。その町のリアルな姿が何枚も本書に記録されている。フィクションのような数々の光景が今なお現実に存在していることが信じられないと思う人が多いのではないだろうか。その光景の一枚一枚にはかつて人類が存在し、日々の暮らしを送っていた痕跡を感じ取れるものだろう。私自身、本書を偶然手に取り興味本位で読み進めたが、何度も読み返した。そして本書に引き込まれた私は29年前のチェルノブイリ原子力発電所の事故をどうしても知りたくなってしまった。調べていく中で、当時事故を隠そうとしていたソ連の姿や、この事故を収拾しようとして80万人が自らの命を放射能の危険にさらし、このうち2万5000人が亡くなり、7万人が障害を負ったことを知った。それだけでなく未だに大量の放射線物質が残っており、事故後に生まれた子どもたちにまで健康被害が相次いでいる。まだまだ調べれば調べるほど、余りにも悲惨な現実を目の当たりにした。そして調べた後もう一度本書を読むと、まったく違う光景に見えてくるのではないだろうか。このフィクションのようなリアルを多くの人に見てもらいたい。そして突きつけられた現実を少しでも本書を通して感じ取ってほしい。大 賞『廃墟チェルノブイリ』中筋純 写真・文、二見書房、2008.

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