うした貴重な機会です。今回は計40編の応募がありました。前回より応募数が増え、また短期大学部以外の全学部の学生から作品が寄せられたのはうれしいことでした。開設したばかりの農学部からも応募がありました。複数応募してくれた人も5名います。審査は、三原龍志先生(文学部)、杉村繁一図書館事務部長、そして図書館長の私の3名で行ないました。おもに、その本の魅力がどれほど伝わってくるか、そしてどれくらい読みたくなるかという観点から、それぞれに10点満点で採点し、その合計点をもとに順位をつけました。結果、大賞1編、優秀賞4編を選出しました。これまでと同じく、今回も接戦でした。1点差で入賞を逃した作品も少なくありません。それだけ、力作揃いだったということです。受賞されたみなさん、おめでとうございます。そして、参加してくださったみなさん、ありがとうございました。大賞の竹鼻智也さんが推薦するのは、中筋純『廃墟チェルノブイリ』(二見書房、2008年、深草図書館所蔵)です。この本は、1986年に発生したチェルノブイリ原子力発電所の爆発事故から21年後の“廃墟”をテーマとした写真集です。じつは第1回(2012年度)でも優秀賞を取った作品が薦めていたことを、審査後に知りました。実際に写真集を手に取ってみると、そこから訴えてくるものの迫力に圧倒されます。私たちは福島原発の事故を経験していることもあり、いっそう切実に感じられるのでしょう。そうした迫力、魅力を竹鼻さんの文章はよく伝えています。ちなみに、この本は2010年度に「学生選書」で購入した本でした。つまり、購入段階から学生が薦めてくれていたのです。福島原発事故の“風化”が確実に進行しているかに見えるいまだからこそ、2015年にノーベル文学賞を受賞したスベトラーナ・アレクシエービッチさんの『チェルノブイリの祈り』(松本妙子訳、岩波書店〔岩波現代文庫〕、2011年、深草図書館所蔵)などとともに、ぜひとも多くの人の目にとまってほしい1冊です。大賞作も含め、応募作品が私たちに薦めてくれる本は、じつに多様です。私自身、読んだことのある本はごくわずかで、知っているけれども読んだことのない本、あるいはそもそも知らなかった本がほとんどでした。このイベントがなければ、知ることのなかった本、たどり着くことのなかったであろう本と、こうして出会うきっかけを与えていただいたことに心から感謝します。そして、私と同じ経験を、みなさんにも味わってほしいと強く願っています。大江さんは、「表現することは、端的に新しく経験すること、経験しなおすこと、それも深く経験することだ」とも述べていました。応募者のみなさんは今回のコンテストへの参加をつうじて、きっと新たな、深い経験をされたのではないかと想像します。私たちもまた、その表現をきっかけに、新たな本との出会い、これまで見過ごしてきた本の魅力との邂逅を経験できます。受賞作は図書館ホームページに掲載されています。まずは読んでみてください。そして、つぎに表現=経験するのはみなさんの番です。第5回にはいっそう多くの応募者が集うことを期待しています。龍谷大学図書館は、みなさんが「本の園耕民」になれるよう、これからも力強く支援していきます。41
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