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日中ジャーナリスト交流会議 編、築地書館、2012.29寸 鳳美(政策学部 政策学科 2年)この本を薦める理由は、日中両国のニュース、新聞などのメディアの報道の裏をより多くの人に知ってもらいたいと思ったからである。尖閣問題をめぐって、緊張し続けている日中関係には打開策があるかどうかをみんなで考えてほしい。そのために、まず、日中両国民はメディアを通じて入手した情報の正しさ、信憑性について、正しい判断をする必要がある。この本は2007年から2012年にわたり計6回開催された「日中ジャーナリスト交流会議」の様子、会議の内容、そして、両国のジャーナリストの認識の違いによる摩擦などについて詳しく書かれている。文字通り「日中の壁」とは、日本と中国の間に何らかの壁が存在するということである。この本を執筆したジャーナリストの1人によれば、両国の関係の良し悪しは、日中両国のジャーナリストにも責任があるということである。最初の日中ジャーナリスト交流会議において、両国のジャーナリストは相手国に対する誤解が多かったと言う。そのため、報道の内容を知った両国民に大きな影響を与えたそうである。日中ジャーナリスト交流会議を提案したのは、日本の有名なジャーナリストである田原総一郎氏と中国の元駐日大使である王毅氏だ。田原氏はあるとき、香港のフェニックステレビが企画した「日中のディスカッションテレビ」に出演した。その時に、田原氏は「扶桑社の歴史教科書には南京大虐殺のことが全く削除されているが、いったいどういう魂胆なのか」などいろいろな厳しい質問を受けた。しかし、田原氏はそのような質問を予測し、その教科書を持参して行った。そして、田原氏は、「この本を読んだことのある人はいますか?」と聞いたところ、誰も読んだ人はいなかったと言う。田原氏は、南京大虐殺の箇所を読んで聞かせた。中国ではすべて削除しているという誤った情報が広がったようだ。このことを王毅氏に話した。日中ジャーナリスト交流会議は両国のジャーナリストたちのコミュニケーションを深めるために開催されたことが分かった。6回の会議を経ても、両国のジャーナリストの間でまだ越えられない壁は「誰のために報道するのか」ということだ。中国では当局の統制により、報道の自由が制限されている。中国のジャーナリストは真実を国民に伝えるためには、「国益」と「国民の利益」を区別しなければならない。これが壁である。日中両国のジャーナリストが問題意識をある程度共有し、日中関係の緩和につなげることを期待している。優秀賞『日中の壁』

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