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下江 健人(国際文化学部 国際文化学科 4年)私が、お薦めしたい本は、ピエール・バイヤール著、大浦康介訳『読んでいない本について堂々と語る方法』という本だ。私たちが社会生活において、年齢また職業などによってこれは読んでおかないといけないといった必読書といったものが世の中に存在する。それは、現在大学生である私自身の例で挙げるのであれば、プラトンの『国家』やレイチェル・カーソンの『沈黙の春』、ドストエフスキーの『カラーマーゾフの兄弟』などなどが挙げられる。そのような、必読書というものを読んでおかないと他人とそのような話題になった時に恥をかいたり、無教養であると思われたりすることが起こり得てしまう。そのためには、これらの必読書を読まなければいけないという思いに駆られる。しかし、そのような状況で読んでいない本について堂々と語る術をこの本において学ぶことができる。それは、本書において、著者が指摘しているが、そもそも、本を読んだとはどういう状態をいうのであろうか。本の内容をすべて読み内容を理解して、読んだ本の事を他人に伝えることができたのであれば、もちろん本を読んだということになる。だが、流し読みやまったく未読の本であるが他人の評論を見聞きしてその本について知ることや、また、友達などからある本に対してのあらすじや感想を聞いて本の内容を知ったりと、何らかの形である本についての内容を知り、そして他人にその本についてしっかり伝える事ができたのであれば本を読んだということになるのではないだろうか。つまり、本を読んだということは、その本にたいして何らかの自分なりの解釈をし、それをしっかり他人に伝えることができたのであれば本を読んだと言えるのではないだろうか。そのため、本を一冊すべて読まずとも本のどこか一部分においてでも内容を知り、その部分に対して自分なりの発見や考えが見出されて、その部分を他人に伝えることができるのであれば、本を読んだということになるのではないだろうか。必読書に対しても、本の内容すべてを読まずとも、流し読みや外からくる情報によってその本を知り、他人に堂々と語ることができるのであればその必読書を読んだということになるのではないだろうか。このように、本書には読書にたいする姿勢が書かれている。ここで紹介したのはこの本の内容のほんの一部であり、本書には、創造的読書の誘いや実際に読んでない本に対してコメントする時の仕方といった内容などが著者のユーモアを交えつつとても読みやすく書かれている。読書に対しての姿勢を考えさせられるのでぜひ読んでいただきたい。20佳 作『読んでいない本について堂々と語る方法』ピエール・バイヤール 著;大浦康介 訳、筑摩書房、2008.

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