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19川橋 弘子(社会学部 臨床福祉学科 2年)テレビを見たり、漫画を読んだりして、誰もが知っているサザエさん。本の題名に書かれていたその名前を見て、『サザエさんをさがして』というこの本を読んでみようと思いました。平成生まれの私にとって、サザエさんの暮らしは今とは少し違う印象を受けます。三世代同居の大家族、家族そろっての食事、地域の人との強い関わり。この本は、現在の平成とサザエさんの時代を比較することによって気づかされることが書かれています。今の日本は、ものや経済などのさまざまな発展を遂げてきたため、生活が便利になりました。しかし、生活が便利になり暮らしやすくなることだけが良いとは限らないと思います。この本に書かれている数十年前のサザエさんの物語を読むと、昔からずっと残り続けるべきものがあるのではないかと思いました。それが、先にも述べたような、家族形態や近所・地域の人との関わりです。今の日本は、一人暮らしの人が増えて引っ越しをする人も多くなったために、近所の人との関わりが薄くなって、人によっては隣の人の名前や顔も分からないという話を聞いたことがあります。近くに住んでいるのに知らないというのは寂しい感じがします。また、私たちは人の助けがなければ生きていけません。だからこそ、家族をはじめ近所の人や地域の人との関わりを大切にすること、その関係を持ち続けていくことを、サザエさんの物語は伝え続けていると思います。このように、今と昔で変わったことをもとに、思わず考えてしまう内容が詰まっています。この本は、細かくテーマに分けられていて、それぞれ4ページずつの構成になっています。例えば、きもの・敬語・受験というように分けられています。一つ一つのテーマが短いので、長文が苦手な人や、興味のあるところだけを読みたい人にとっては読みやすくなっています。また、サザエさんを知っている人にとっては、テレビで見るアニメのサザエさんを思い浮かべながら読み進めることができます。この本を読む人が高齢の方であっても、昔のことを振り返りながら読めるので、懐かしいと感じられるのではないかと思います。私のような学生は現代の暮らししか知らないので、少し前の日本の暮らしを知ることができます。それと同時に、時代の移り変わりによる影響を考えるいい機会にもなります。この本は、時代の移り変わりという視点から日本の暮らしを見つめることができ、みながよく知るサザエさんが登場するので、楽しみながら読み進めることができます。佳 作『サザエさんをさがして』朝日新聞be編集部 編、朝日新聞社、2005.

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