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16宮永 奈苗(文学部 歴史学科 1年)あなたは「知的」という言葉を聞いてなにを思い浮かべるだろうか?近頃勉強本プームが起きており、「知的勉強法」などといった類の本をよく目にする。私がここで紹介したいのは渡部昇ーが著した『知的生活の方法』についてである。この本は1976年に書かれ、今でも読み継がれているベストセラーである。35年以上前に書かれたとは思えないくらい、内容の斬新さに初めて読んだ時は驚かされた。この本を手にしたのは、大学入学前であった。一人暮らしの準備が着々と進む中、父から「暇があったら読んでみろ」と渡されたのがきっかけだった。そのようなことも忘れ、入学式を終え大学生活も慣れ始めた4月下旬頃、夜に、ふと父に渡されたことを思い出し、暇つぶしにでも、と読み始めた。すると『知的生活の方法』は、私にとって1つ1つの言葉、文章がどれも新鮮で、頭の中に次々と言葉が刻まれていった。読み進めるのがもったいないと思え、同じ文章を何度も読み直し、渡部氏の言葉をかみ締めながら読み込んでいった。正直、このような体験は初めてであり、早くも「座右の書」に出会えた気がした。今の私の大学生活をどう過ごすかを決めた一冊であった。本の内容は、渡部氏が読者に対して、より豊かな人生を送れるように、勉強面はもちろん日々の過ごし方、将来設計、食事など具体的にヒントを与えてくれている。なかでも、特に心に響いた箇所を一つ挙げる。渡部氏は「わからないと公言することを怖れない」、「わからないものをわからないとし、ほんとうにわかったものだけをわかったことにしよう」と「『わからない』に耐える」ことの大切さを述べている。私はこの言葉を常に心におき、知ったかぶりをせず、わからないことを恥じない気持ちで大学の授業に臨むようにしている。本というものは、出会いがとても大切であると思っている。出会い方は人それぞれであり、またその一冊の出会いが、人生を大きく変えたり、心のよりどころとなったりすることがある。私は『知的生活の方法』に出会えるきっかけとなった父にとても感謝している。毎日を漫然と過ごすことなく、少しでも知的に生活できるよう、努力するようになった。私も、父のようにこのお薦めで誰かがこの本と出会えるきっかけとなってくれたらと思い、『知的生活の方法』を私のお薦めの本として紹介した。佳 作『知的生活の方法』渡部昇一 著、講談社、1976.

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